書面添付制度の活用
「税務調査がなくなる」わけではありませんが、確率はぐっと低くなります。
書面添付制度を利用するためのハードルは相当高いです。
メリット
税務申告書・決算書の信頼性が高まるため
① 税務調査の確率が低くなることが期待でき、関与先法人の税務調査の事務負担・精神的負担を軽減することができます。
② 税務調査が実施される場合でも、調査日数が縮減されることが期待できます。
③ 金融機関などからの信頼も高まります。
デメリット
帳簿等が適時・正確に作成されているかどうかについて、毎月税理士事務所の監査(巡回監査)を受ける必要があります。
書面添付制度とは
平たく言えば、税理士が「この会社の法人税・消費税申告書は正確な決算書に基づき適正に作成されたものである」と税務署に対し太鼓判を押すようなものです。
正確な会計帳簿に基づいて正確に作成された申告書であることの保証書、証明書と言ってもよいと思います。
このため税理士の責任もより重いものとなります。
具体的には、税理士が作成した税務申告書について、その作成内容に関して、①どのような項目について、②どのような資料に基づき、③どの程度確認し検討・判断したか、更には④どのようなことについて顧客から相談を受けたのか、を書面の形にして税務署に提出する手続です。
税理士法第33条の2に基づき認められている制度で、税務当局も「税務の専門家である税理士等の立場をより尊重し、税務執行の一層の円滑化、簡素化に資する」制度として、制度の普及・定着を図ることとされています。
(国税庁事務運営指針参照)
書面添付を行うまでの流れ
真に適正・正確な法人税・消費税申告書を作成して書面添付の手続を行うために、最も基本的で重要なことは、会社の日々の記帳処理が適時にかつ正確になされているかどうかを、監査手法を用いて毎月確認することです。
このため関与先法人の理解と協力も不可欠です。
① まず税理士(又は監査担当職員)が、領収書、現金有り高等の原始資料に基づき、毎月監査(巡回監査)を行い、その結果を記録していきます。
② 会社から相談を受けた内容とその対処した内容についても記録していきます。
③ 決算時には、棚卸残高等決算時特有の事項を含めて、再度網羅的に見直しチェックします。
④ 以上に基づいて、税務申告書を作成した上で添付書面を作成し税務署に提出します。
書面添付の効果
税務当局では、税務と会計の専門家である税理士が、「会社が正確・適時に作成した会計帳簿などの資料に基づき、責任をもって計算し、整理した結果」として、法人税・消費税申告書を作成し書面を添付していることを尊重します。
この結果として、税務調査の確率は、書面添付を行わない場合に比べて、ぐっと低くなります。
また、税務当局が、書面添付がされている会社の税務調査を実施する際には、事前に書面添付を行った税理士に対して、添付書面の記載内容等について意見聴取を行うこととされています。
税理士はこの際に、調査担当者からの質問に回答するとともに税理士が実際に確認した事項等について資料に基づき申告内容の説明をすることができます。
この意見聴取の結果、調査が省略されたり、調査日数の短縮がなされることが期待できます。